巨大なゴリラに出会った。と言ってもぬいぐるみだけど。場所は谷中霊園。軽トラの荷台に箒などの掃除道具と一緒に乗せられてこちらを見ている。落とし物? いや~、こんなの落とす人いないよ。ゴリラ好きの故人の墓にあったのか・・、よく見たら、横にもう一頭小さいのが。はは~ん、運転手さんがゴリラ好きなんだ、シンパシィを感じて運転席を覗いたけど、寝ていたのでそっと立ち去った。中学校が谷中霊園のそばだったので、ここは馴染みの場所。偉人たちの墓巡りもいいけど、私の場合はふてぶてしい墓守みたいな野良猫に会えたり、今回のゴリラのような意外な出会いがあるのが嬉しくて、何十年も飽きることなく訪れている。 足の向くままぷらぷら歩いていると、墓石のそばで這いつくばる2人の少年。小3くらいかな。何か探してるの?「ヤモリ!」元気な声が返ってきた。へ~、墓場でヤモリねと思いながら、近くで元禄時代の刻印のある石仏の写真を撮っていたら、捕まえたヤモリを持ってきて見せてくれた。すごいね~と褒めると、「墓石の下に隠れてるんだ」と得意満面。ヤモリのぎょろとした目や5本指の手の形がとてもキッチュ。ちょっとミニ恐竜みたい。子供はこういうの好きかもねと思って、少年を見たら、恐竜の絵のTシャツを着ていた。 「逃がしてあげるんだ」と言いながら、小さな爬虫類の全身に砂をまぶし始めた。なぜ、まぶすのかと思ったけど、彼らなりの考えがあるんだろう。遠ざかりながら、「あんまり、いっぱいかけると窒息しちゃうよ」と言ったら、後ろから「ちっそくって何?」という声。私は笑いながら「息が出来るようにしてあげて」と言ったら、「わかった」という元気な声が返ってきた。「窒息」を知らないのか、かわいいね。ほんの数分のやりとりだったけど、少しだけ子供時代に戻った気がして、楽しかった。 さて、今回は珍しくお墓参りをした。最近よく名前を耳にする渋沢栄一さんだ。2024年から新一万円札の顔になるという。管理所でもらった案内図を見ながら乙11号1側を探す。きちんと区画整理されているけど、他の墓も見ながらわざと遠回りして細い道をたどってみる。あった、広い敷地に堂々とそびえたつ立派な墓が。7000基近くある墓石の中でも、最大級ではないか。さすが、91歳まで長生きした近代日本経済の父。何かご利益がありますようにと手を合わせ、帰路についた(悦代)。