カテゴリ:浅草



散歩漫歩マンボ · 06日 7月 2020
 巨大なゴリラに出会った。と言ってもぬいぐるみだけど。場所は谷中霊園。軽トラの荷台に箒などの掃除道具と一緒に乗せられてこちらを見ている。落とし物? いや~、こんなの落とす人いないよ。ゴリラ好きの故人の墓にあったのか・・、よく見たら、横にもう一頭小さいのが。はは~ん、運転手さんがゴリラ好きなんだ、シンパシィを感じて運転席を覗いたけど、寝ていたのでそっと立ち去った。中学校が谷中霊園のそばだったので、ここは馴染みの場所。偉人たちの墓巡りもいいけど、私の場合はふてぶてしい墓守みたいな野良猫に会えたり、今回のゴリラのような意外な出会いがあるのが嬉しくて、何十年も飽きることなく訪れている。  足の向くままぷらぷら歩いていると、墓石のそばで這いつくばる2人の少年。小3くらいかな。何か探してるの?「ヤモリ!」元気な声が返ってきた。へ~、墓場でヤモリねと思いながら、近くで元禄時代の刻印のある石仏の写真を撮っていたら、捕まえたヤモリを持ってきて見せてくれた。すごいね~と褒めると、「墓石の下に隠れてるんだ」と得意満面。ヤモリのぎょろとした目や5本指の手の形がとてもキッチュ。ちょっとミニ恐竜みたい。子供はこういうの好きかもねと思って、少年を見たら、恐竜の絵のTシャツを着ていた。 「逃がしてあげるんだ」と言いながら、小さな爬虫類の全身に砂をまぶし始めた。なぜ、まぶすのかと思ったけど、彼らなりの考えがあるんだろう。遠ざかりながら、「あんまり、いっぱいかけると窒息しちゃうよ」と言ったら、後ろから「ちっそくって何?」という声。私は笑いながら「息が出来るようにしてあげて」と言ったら、「わかった」という元気な声が返ってきた。「窒息」を知らないのか、かわいいね。ほんの数分のやりとりだったけど、少しだけ子供時代に戻った気がして、楽しかった。  さて、今回は珍しくお墓参りをした。最近よく名前を耳にする渋沢栄一さんだ。2024年から新一万円札の顔になるという。管理所でもらった案内図を見ながら乙11号1側を探す。きちんと区画整理されているけど、他の墓も見ながらわざと遠回りして細い道をたどってみる。あった、広い敷地に堂々とそびえたつ立派な墓が。7000基近くある墓石の中でも、最大級ではないか。さすが、91歳まで長生きした近代日本経済の父。何かご利益がありますようにと手を合わせ、帰路についた(悦代)。

散歩漫歩マンボ · 10日 6月 2020
 最近、妙に涙もろい。例えばブルーインパルスの飛行。飛んでいるときは、あの音と飛行機雲に驚くばかりだったが、ニュースで医療従事者たちが手を振る場面を見たら、涙が止まらなくなった。これに感動した人は多いだろうから、これをして涙もろいとは言えないが、人間模様が描かれたドキュメンタリー番組などを見ると、やたら涙がこぼれる。情緒不安定?と思ったけど、これって人と接してないからではないか。ほぼ毎日、カメラを持って出かけるが、人に声をかけて撮らせてもらうのは憚られる。犬にも飼い主さんに遠慮して近づけないし、目を合わせるのは野良猫くらい。少々くじけ気味だったが、もうすぐ梅雨、太陽を拝める日は貴重だからと出かけることに。この日は家から10分ほどのお化け地蔵と首切り地蔵に会いに行った。笠を被り、時々向きを変えたといわれるお化け地蔵、小塚原刑場に供養のため建てられた首切り地蔵、どちらも300年近く前のもので共に3m以上もあるが、表情は優しい。名前が怖いせいか、いつも人けがないので、ゆっくりお顔を見れる。  日も傾いてきたので、気分を変えて隅田川沿いの公園へ。よちよち歩きの赤ん坊、縄跳びする子供、いつもなら声をかけて撮らせてもらうのに・・。西日がいい感じで当たる草花を撮ったりするが、イマイチのらない。やっぱり人が面白い、なんて思いながら、うろうろしてたら、ふと、自分の影とガードレールのシルエットに目がいく。妙に足が長い、あれ、さっきのお地蔵さんみたいなんて思いながら、長い時間、自分の影と遊んでいたら、ふっと後方に人の気配。ふりむくと空き地でスケボーをする若者と目が合う。「何やってるだろ、あの人」と思ったのだろう。あれこれポーズを変えて撮っているところを、彼らに見られていたのだ。数m離れていたので言葉は交わさなかったが、微笑んでいて、私の遊び心を認めてくれているのがわかった。気恥ずかしかったが、好きなことを夢中でやっている者同士、通じる何かがあった。ブルーインパルスのパイロットと医療従事者、そして、それをTVで見ていた人々も、直接は言葉は交わしていないだろう。だけど、共感があった。お地蔵さんとも若者とも言葉は交わしていないけど、何かを感じ共感したこの日は、とてもいい一日だった(悦代)。

散歩漫歩マンボ · 15日 5月 2020
三社祭は毎年5月の第3週に開催される。今年は10月に延期されたが、本来行われるべき週末になったら、お囃子は聞こえてこないのに、初夏の陽気に体が反応して血が騒いでしまう。生れた時からの祭りというのは、体に染みついているのだなと思いながら、三社様(浅草神社)に出かけてみた。神輿が飾られてるのではないかと期待したが、神輿蔵は閉ざされ、鍵がかかっていた。が、大扉に描かれた三社祭の印がかっこいい。今までさんざん見てきたが、こんな美しいと思ったのは初めてだ。 去年は二ノ宮の宮入の神輿を担いだ。宮出、宮入は町会の持ち回りで、前回は20年程前だった。その時は、浅草寺の裏手から入ってすぐのところで、最後の担ぎ手にバトンタッチ、町内の担ぎ手はお宮の前までは担げなかった。今回もそうだろうと思っていた。私の前後は女性で、どちらも担ぎなれているから、歩調が合い、気持ちがいい。「いつでも、かわるよ~」と、担ぎたくて仕方のない男たちがすぐ横にはりついて呟くが、「うるせ~、かわるもんか」と、威勢のいい声をあげる。女は出ろっと、引っ張り出される人も多かったが、私たちの横には町会の青年部の若者がいて守ってくれた。前回バトンタッチした辺りを目標に、とにかく、あそこまでだと歯を食いしばる。が、次の担ぎ手たちが待っている気配がない。本宮は本当に重い。もう限界だ、だけど、いまかわるわけにはいかない!の繰り返えし。え、どこまで、もうダメだ、なんて思いながら、とうとう、お宮の前へ。担ぎ切ったのだ。神輿の担ぎ棒から肩を外し、台に神輿を置いた瞬間、周りから喜びと安堵の声が湧き上がる。みんな興奮していたが、自分の体を包んだのは静かな喜びだった。神輿を担いでいるときは、何かに守られているような安心感に包まれる。 去年は肉体的につらかった分、やり遂げた満足感は大きかったが、それ以上に敬虔な気持ちになった。キツイ、シンドイと思っているんだけど、一方で神様が近くにいる喜びみたいなものがあって、何とか持ちこたえたとき、すごい快感を味わった。これって、今に当てはまるところが少しはあるんじゃないかしら? 三社さま、どうですか、教えてください。(悦代)

散歩漫歩マンボ · 17日 4月 2020
朝、晩、山谷堀公園を散歩している。もともとは隅田川から吉原まで続く堀を暗渠にし、その上に作られた公園だ。江戸時代、旦那衆が猪木船を仕立てて、吉原に通ったという。子供の頃から馴染みのある公園は、薄暗く、うらぶれた感じだったが、桜の季節のときだけは華やいだ。その公園が改修工事をして、大々的に生まれ変わった。大きな桜の木は切られ、その代わりに遊具が増えた。子供の姿が増え賑やかになったが、私は人がほとんどいない静かな公園が好きだった。ただ、道がまっすぐになり、見晴らしが良くなったので、試しに後ろ歩きをしたら、いつも使わない筋肉を使うからいい感じ。人にぶつからないように、たまに後ろを確認するから前より首も回るようになった。 数日前、いつものように後ろ歩きをしていたら、ブランコに乗る10歳くらいの少年と目が合った。すると彼は「後ろ向きに歩いてる~」と独り言ちながら、速攻でブランコを降り、方向を変え乗りなおし、「違う建物が見える~」と感動の声をあげたのである。180度向きを変えたんだから景色が変わるのは当たり前なんだけど、そのリアクションがとても新鮮だった。子供って素直でいいな~。今、TVでもSNSでもあの言葉で溢れ、世界中が同じことにおびえ憂えてる。数日前、TVで糸井重里さんが「1時間でもいいから、あのことから離れてみよう」みたいな提言をしていた。同感だったけど、どうしても気になって、情報を仕入れてしまう。でも、少年のようにさっそくやってみよう。何か違うものが見えてくるかもしれない。(悦代)

生活雑思 · 09日 4月 2020
緊急事態宣言が出る数日前、町会のお達しが回ってきた。例年5月開催の三社祭はとりあえず10月17~19日に延期するとある。仕方がない。1トン近くある本宮神輿を100人を超える男女が半纏越しとはいえ背中と胸を強く押し付け連なり、大声で唾を飛ばしまくりながら渡御するのだ。いくら屋外とはいえ、これを濃厚接触といわず何といおう。浅草神社の氏子にとって三社祭は最大の楽しみであり、肩に食い込む神輿の重さに「今年もなんとか無事に担げました」と、感謝の気持ちを感じる大切なハレの日だ。残念だけど仕方がない。 で、気分転換に三社祭の手ぬぐいを引っ張り出してきた。まずは勇ましく鉢巻きに、鼠小僧のように口まで覆ったり(意外と息苦しい)、マスク代わりの覆面と、あれこれ試しつつ、行きついたのは、ほおかぶりだ。いかにも巣ごもりしてます、という風情が気に入った。ほおかぶりのままパソコンに向かうと、集中力も増してきそうだ。春の陽気に誘われて、このままま散歩に出てみようかな。コスプレというほどでもないけど、変なおじさんが歩いてた、と子供が笑ってくれるかもしれないし、人も近づいてこないから一石二鳥だ。そうな感じで、巣ごもりを楽しんでいきたい。(邦彦)

墨堤の桜、隅田川に浮かぶ屋形船。芸者衆も繰り出す華やかな風景は、今年は見られない。
散歩漫歩マンボ · 05日 4月 2020
浅草側から隅田川にかかる桜橋を渡ると、江戸からの名所、墨堤の桜が楽しめる。毎晩の散歩コースで、1年中歩いている。例年ならこの季節、隅田川は屋形船でいっぱいだが、ここ2か月、めっきり減った。その代わりに川には水鳥がたくさんたゆたっている。それでも、屋形船はゼロではなく、毎晩2、3艘は見かける。3~4人のグループ同士が間を開けて座っている。夜は出歩かないでと知事が言ったその晩も1艘見かけた。 外出自粛を言われた2度目の週末。陽気も良く桜は満開で、昼間は多くの人が外出していた。墨堤でも多くの人がマスクをして、きちんと列をなして黙々と歩いていた。日本人らしい。夜も人はいるのか気になって、また、出かけてみた。とくに去年は賑わった印象がある。満開の桜に、向島の芸者さんの華やかさと屋形船の照明が加わって、ずいぶんカラフルだなと思った覚えがある。30分ほどいたが、数人の人と自転車が数台通っただけ。さすがに屋形船は1艘もいなくて、隅田川の川面は真っ暗で、色があるのは桜だけ。去年までは桜を見ていたのではなく、浮世の人々や屋形船を見ていたことに気づいた。今、色があるのは桜だけなので、その美しさをより堪能できることに気づいた。日本人はちゃんと自粛してるじゃないと思いながら帰路につくと、浅草側の公園に若者が7人ほど集い、イエ~イエ~と大声でラップの練習をしていた。間隔は1メートルもあいていない。もちろん、マスクはしていない。インドだったら、警官に殴られて、スクワットまたは腕立て伏せ間違いなし。この日、東京の感染者が初めて三桁になった。(悦代)

吉原桜に雪が降る
散歩漫歩マンボ · 31日 3月 2020
週末は外出を控えてと、都知事が言ったその日曜、東京は雪になった。その前日に通りかかった吉原弁財天の満開の桜が目に浮かんだ。あの桜に雪が積もる様子は、どんなだろう。...

浅草はキモノ女子であふれてる
散歩漫歩マンボ · 27日 3月 2020
桜が満開だ。マスクをして浅草寺に行ってみた。2か月前は外国人であふれていたけど、この日は日本人のキモノ女子であふれていた。境内にいる人の8割は若い女性だ。満開の桜の下で自撮りのための順番待ちをしている。艶やかな着物の色合いと桜のピンクが重なって、境内はいつもの何倍も華やいでいる。...

亡くなった奥様の写真を車椅子に乗せ、満開のサクラを見せに、隅田公園を訪れた優しいご主人。
散歩漫歩マンボ · 24日 3月 2020
柔らかな日差しに包まれ、花見客でにぎわう隅田公園。 いたるところで宴会自粛の貼紙がにらみを利かせていて、さすがにブルーシートを広げた団体はいない。が、6、7人のグループ宴会はちらほら見かけた。新聞紙を広げるぐらいは大丈夫なんだよ、ともっともらしいことを喋りながら酒を酌み交わしている。...