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言葉を交わさない共感

 最近、妙に涙もろい。例えばブルーインパルスの飛行。飛んでいるときは、あの音と飛行機雲に驚くばかりだったが、ニュースで医療従事者たちが手を振る場面を見たら、涙が止まらなくなった。これに感動した人は多いだろうから、これをして涙もろいとは言えないが、人間模様が描かれたドキュメンタリー番組などを見ると、やたら涙がこぼれる。情緒不安定?と思ったけど、これって人と接してないからではないか。ほぼ毎日、カメラを持って出かけるが、人に声をかけて撮らせてもらうのは憚られる。犬にも飼い主さんに遠慮して近づけないし、目を合わせるのは野良猫くらい。少々くじけ気味だったが、もうすぐ梅雨、太陽を拝める日は貴重だからと出かけることに。この日は家から10分ほどのお化け地蔵と首切り地蔵に会いに行った。笠を被り、時々向きを変えたといわれるお化け地蔵、小塚原刑場に供養のため建てられた首切り地蔵、どちらも300年近く前のもので共に3m以上もあるが、表情は優しい。名前が怖いせいか、いつも人けがないので、ゆっくりお顔を見れる。

 日も傾いてきたので、気分を変えて隅田川沿いの公園へ。よちよち歩きの赤ん坊、縄跳びする子供、いつもなら声をかけて撮らせてもらうのに・・。西日がいい感じで当たる草花を撮ったりするが、イマイチのらない。やっぱり人が面白い、なんて思いながら、うろうろしてたら、ふと、自分の影とガードレールのシルエットに目がいく。妙に足が長い、あれ、さっきのお地蔵さんみたいなんて思いながら、長い時間、自分の影と遊んでいたら、ふっと後方に人の気配。ふりむくと空き地でスケボーをする若者と目が合う。「何やってるだろ、あの人」と思ったのだろう。あれこれポーズを変えて撮っているところを、彼らに見られていたのだ。数m離れていたので言葉は交わさなかったが、微笑んでいて、私の遊び心を認めてくれているのがわかった。気恥ずかしかったが、好きなことを夢中でやっている者同士、通じる何かがあった。ブルーインパルスのパイロットと医療従事者、そして、それをTVで見ていた人々も、直接は言葉は交わしていないだろう。だけど、共感があった。お地蔵さんとも若者とも言葉は交わしていないけど、何かを感じ共感したこの日は、とてもいい一日だった(悦代)。

コメント: 4
  • #4

    クロ多ヒロフミ (水曜日, 24 6月 2020 09:16)

    歩いていると歩いているそのことのために歩きやがて歩いていることさえ忘れてしまいます
    ケンケンぱのかすれたチョークの跡 お亡くなりましたの町会掲示のお知らせ 半分開けられた玄関の簾から漂う魚が焼けるあぶらの匂いと煙 町工場の規則的な機械音と大工が木を打つ不規則な音に子供や鳥の声 ふと迷い込んだくねる暗渠を通る風 誘われて目的の場所ではなくどこにでもない場所に向かっていると ふと気づくのです

  • #3

    山地真理子 (日曜日, 14 6月 2020 21:18)

    脚ながっ‼️ 夕方の影法師、面白いね。

  • #2

    深川 和郎 (日曜日, 14 6月 2020 10:39)

    自然体が一番です。それが人間なのでは。
    目を合わせただけで心が通じ合える・・・
    素晴らしい場面です。
    気をつけながら自分たちらしく生きていくことが大事だと感じています。

  • #1

    Kyoko (木曜日, 11 6月 2020 18:49)

    そろそろ、声を掛けてもいいころなのでは。少なくとも、野外で、マスクをして、2メートル以上離れていればOKだと思うのです。でも、それってコロナ全盛のときだって、実はOKだったのだと思います。正しく怖がることが大事。変な世の中にならなければいいなと危惧しています。