今年の三社祭りは何もかも異例だった。氏子が実際に神輿を担ぐのは、宮入りと宮出しだけ。それ以外は神輿の下に台車があり、押して移動する仕組みだ。 例年は一本の担ぎ棒に十数人の担ぎ手がひしめきあうのに、押す人が数人いて、あとは赤ちゃんを抱っこしたり、小さな子と一緒に神輿に触るだけの人もいた。皆、マスクして声出し禁止。たまに高揚してセイヤ〜と言ってる人がいたが、怒られて肩をすくめて口をつぐんだ。
カメラを持って神輿について回ったが、しゃがんで横から覗くと、普段は絡まるほどの脚で一杯なのに、今年はスカスカで、隙間から小さな子供の姿が見え、目が合ってしまう。不思議な光景だ。神輿の移動も、例年なら町会ごとに巡る神輿が決まっていて、「今年は一之宮が家の前を通るね」なんて会話をするのに、三基つらなっての移動。先導するのも神主や馬なのに、今年は見当たらない。大人しく曳かれて歩く優しい顔の馬を見るのも楽しみの一つなのだが、替わりに目に入ったのが、天狗だった。
友人の子供が興味を示し、一緒に写真を撮りたいという。神輿の進み具合で待機していた天狗は、ちょうど動き出すタイミング。申し訳ないと思いつつお願いしたら、快く頷いてくれた。焦って横に立たせて、写真を撮ったが、天狗はその子の頭にそっと手をのせてくれた。お礼を言ってその場を離れたとたん、
「天狗さんって人間じゃないと思ったけど、人間なんだ。手を見てわかった。それと、一本下駄履いてたけど、あれって、すごく疲れるのに、ずっと歩いてるってすごいね」。小学生になったばかりなのになかなかの観察力。あとでその写真を見たら、その子は両掌を大きく広げ、頭にのった天狗の手と相まって、三つの手がトライアングルの形を作り連動している感じ。後日、写真を見たその子は「三社祭だから、三つの手だね」と言ったそう。
本来、天狗は深山に住み、自由に空を飛ぶ怪物らしいが、三社で見た都会の天狗は優しい心根を持ち、一本下駄で歩き回る。神通力を持つのも天狗の特徴らしいが、一緒に写真を撮りたいという子供の気持ちを察する能力も、やっぱり天狗の神通力なのかな (悦代)。
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崎谷 未央 (土曜日, 18 6月 2022 21:40)
伊東さ〜ん!ー!!!
子どもの観察ってすごいですよね�
うちの子は獅子舞が怖くて、怒るときに、獅子舞に電話しますよ!�って言うと焦ってました。
真理子 (日曜日, 19 6月 2022 08:07)
お祭りも早くいつもの盛り上がりが戻ってくるといいですね。それにしても天狗役の方、このお子さんがよーく見ていたように、あんなに高い一本歯で歩き続けられるなんて、すごい❗
マリリン (日曜日, 19 6月 2022 19:02)
さすが、浅草生まれの伊東さん。三社祭りに親しんで、(例年通りではないけれど)楽しんで、大切に向き合ってらっしゃるお姿が伝わってきます。三社祭りと天狗さん、かなり面白い組み合わせですね~!日本らしさを感じます。お子さんの感受性もすごいです。日常の生活の中で、たくさんの会話から色々学ばれてもいるのでしょう。ぜひ、三社の伝統も若い世代に引き継いでいって欲しいものですね!
Kyoko (日曜日, 19 6月 2022 20:41)
都会の天狗って、不思議ですね。
山で修行する山伏から天狗伝説ができたという話しを聞いたことがありますが、この天狗は、浅草で何をしてるんだろうね?
石山キミコ (月曜日, 20 6月 2022 18:53)
は〜い。こちらこそご無沙汰致しました。三社祭、あの賑わい、懐かしいです。今度茗荷谷に来て下さい。
横浜の佳子 (火曜日, 21 6月 2022 17:56)
できる範囲で最大限のお祭りだったのではないでしょうか?(陽ちゃんが目指した数学の最適化につながりますよ)
新たな発見も楽しいです。子供の願いに天狗さんも喜んで先導していたと思います。良い写真ですねー
深川 和郎 (火曜日, 21 6月 2022 22:48)
コロナにならなければこのような体験も出来なかったような気がします。
当たり前でないと色々な角度から物事を捉えることが出来て子どもにとって心を養う機会になりますね。
天狗も喜んでいますね。
子どももこの体験は一生忘れないのではないでしょうか。
理恵 (水曜日, 22 6月 2022 22:54)
三社祭りにも天狗様はいらっしゃるのですね。
鳥越のお祭りでもやはり目を引く存在です。
今年はこちらも山車にお神輿を乗せての静かなお祭りでした。
いつもなら白馬に颯爽とまたがる神主様も今年はなぜか人力車に乗って、でもめちゃくちゃご機嫌な様子で、馬に乗るよりはずっと楽なのでしょうね。
威勢のいい掛け声、来年は聞けるのかなあ。
暖かいよい写真ですね。
このお嬢さん、素晴らしい感性の持ち主ですね!